書きたいものを、好きな時に、好きなだけ。
* 突発的な発作のようなもの *
【 イラ×姫 】


***


廊下を早めに歩く小さな足音が聞こえる。
貴方は私と一緒に過ごす時間をかけがえの無いものだと
言ってくれるけれど、私も同じくらい貴方といる時間を
愛おしく思っている。 自然と頬が緩んで笑顔の自分に気づく。


錠前に鍵が差し込まれる。
覗いた顔は心なしかいつもより乱れていた。


「お疲れさまです、イラさん。 …… どうしたんですか … ? 」
「 ……… 、よかった … 」


貴方の手が私を確かめるように肩を背を髪を撫でる。
よかったって、何が? まったく解らないながらも
心地良くて少し薄い胸に顔をくっつけると、
貴方の細い両腕が私を強く強く抱きしめた。


そのまま数十秒。
互いに何も言葉を発しないまま、
互いの温もりを伝えあうだけ。


先に沈黙を破ったのは貴方。


「 ……… ごめんね? びっくりさせて」
「いえ … 全然」


少しだけ身体を離して貴方の表情を窺う。
困ったような顔で見つめてくる金色の眼。
思ったよりも柔らかい表情にほっとして
笑いかけると、貴方もようやく微笑んだ。


「イラさん」
「ん? 」
「結局、何だったんですか? 」


僅かに彷徨う綺麗な眼。
僅かに歪む薄い唇。
辛抱強く言葉を待っていると細い溜め息が耳に届いた。


「 ……… 変なことを訊いてもいい? 」
「え …… あ、はい」


変なこと?
また、さらに言葉を待つ。
貴方は私の頬に触れながら、ぽつりと言葉を零した。


「 …… 君は …… 持病があったりはしないよね? 」






聞けば、
最近読んだ本が不治の病の女性の話だったらしく、
恋仲の男性が傍にいないときに女性が亡くなってしまうという
哀しい結末だったということで。


私は貴方に自分が健康体そのものであること、
これと言った持病はまったく無いこと、
自分は寿命による老衰でしか死ぬ気が無いことを
貴方の純粋な眼を見つめながら言って聞かせた。


「ありがとう …… よかった … 本当に、よかった」
「私もよかったです。 安心してくれましたか? 」


頷く金色の眼はいつもの柔らかい色に戻っていた。
額同士をくっつけ合って、貴方が私の眼を覗く。


「 …… 僕に黙っていなくなったりしないで …… ね? 」


私が頷いたのを確認して、
貴方の眼が安心したように細くなる。
触れ合う唇と唇はだんだん深みを増していく。




***


それは突発的な発作のようなものだった。


君が黙って僕の前からいなくなったら。
君が消えてしまったら、僕は。
居ても立ってもいられなくなって何の前触れも無く
抱きしめても、そんな僕を君は受け入れてくれる。


( 僕は君がいなきゃ駄目で 君じゃなきゃ駄目で )


君の優しい言葉をもらってようやく安心出来ても
どうしてもその唇に触れたくて。
そのうち触れるだけでは済まなくなって。


( こんな僕で、ごめんね )


それでも君は僕を受け入れてくれるから。


( そんな君が、好き ずっとずっと僕の傍にいて。 )






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今日は書いてる人の誕生日、
最愛のイラたまに過保護気味に心配してもらいましたうふふ。


突発的なこーいう不安になったり心配になったりして
わーってなって姫様きょとん、な雰囲気がとても好き。
(語彙力)

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